前編では資格との出会いや資格の裏話を語ってくださった鈴木秀明さん。
後編では鈴木さんが「資格」に惹かれた理由を掘り下げます。
人類総資格化計画
鈴木さんのこれからについてもう少しお話伺いたいです。
資格っていうのは人間力を高める、仕事に役立つ、お金を稼げるって言うお堅い面だけじゃなく、”エンターテイメント””アート”になり得ることを証明していきたい。
資格のハードルを下げて、もっとみんなに資格に親しんでもらうことで、日本人のスキルや知力が上がって、国力アップに繋がればもっと嬉しいです。
「資格」のイメージを刷新していく、と言うことでしょうか。
「がんばって勉強して資格をとる」ではなく、もっと柔らかく考えてもらい、自分を変えるきっかけになるものだよって広めたいですね。
きっと、1つの資格がきっかけで新しい世界を知る人もいますよね。
そうですね。要するに「きっかけ」です。
通常、勉強って「入試のため」みたいな必要性がないとやらないので、「資格」がもっと新しい学びのきっかけやモチベーションになってほしい。だから、世の中のいろんなことをなんでも資格にする「人類総資格化計画」を推し進めようかとも思ってるんです。
僕は資格を「収集する」感覚で受けているので、必ずしも検定の中身自体にもともと興味があるから受験しているという訳ではないです。でも、逆にそれくらいライトでいいんじゃないかなと。合格したら何かもらえるとか、保有資格が増えるのが楽しいとか、合格したらかっこいいとか・・・受験するきっかけはなんでもいいんです。
「人類総資格化計画」っておもしろい!
興味のある分野に資格ができたら、3日坊主の私でも頑張ってみようかな、と思えます。
最近だと「うんこドリル」がヒットしましたが、あの商品は勉強嫌いの子供達が勉強するきっかけを作ってくれましたよね。
あれは本当にすばらしい商品だと思いました。
僕ももっと緩い本を出したいですね。例えば、いろんな資格の合格証の写真だけがひたすら載ってるような写真集とか。そんなアーティスティックな「なんだこの本は!」っていう驚きを伴う切り口の資格本を出したいんですよ。
鈴木さんが突っ走ったら、もう誰も真似できないすごい作品が仕上がりそうだ・・・。
でも、こういったことも僕一人だとできないですよ。
最近、「資格・検定ラボ」というサイトを立ち上げたんですが、これはCBT(コンピュータで受験する形式)の資格試験の運営などを手掛ける株式会社イー・コミュニケーションズの協力によるものです。どんどん人を巻き込むからこそ、続けていけるのかなと思いますね。
人生は「無難コース」でもOK
先ほど、消費者から生産者の側に移った時、「お金」を意識するようになったとおっしゃってましたよね。本当にやりたいことをやる心の充実と、お金と、どちらかを取らないといけないとしたら、どちらをとりますか?
本当難しい。そういうのに明確に回答を出せる大人になりたい。笑
やっぱり夢を追ったほうがいいと思う。僕自身、自分の好きなことを追求した結果、経済的に大変でも「いい経験だった」と思えました。
でもそれで終わるんじゃなくて、自分の好きなことをどうやったらお金に繋げられるかを戦略的に考えてやることが大切だと思う。言い換えると、自分がやっていることを周りからいかに「お金を出す価値がある」と思ってもらえるようにするかということ。
ただ好きなことをやるとか、ただ発信していくだけではなく、確度高く金銭的価値につながる筋道を描けるのが一番いい。
一つの会社に所属すると、初任給は◯万円、だいたい40歳で年収◯万円くらいで・・・とか天井が見えることが多いですよね。起業したらその天井はない代わりに全く稼げないかもしれません。鈴木さんのように企業に属しながら副業的に働いて・・・というその中間をいくこともできます。
僕のような「無難コース」はどっちつかずで中途半端に見えるかもしれないけど、いざというときの保険というか、収入の基盤をもっておくことって意外と大事。
堅実な基盤となる仕事を確保しつつ、僕にとっての「資格」のようなプラスαの活動を少しずつ展開していくことを考えたら良いと思う。とにかくこれだったら絶対誰にも負けないという強みを磨いたり、いろんな経験を積んだりといったことを地道に継続していく。
これからの時代はどんどん副業が認められていくから、どこかに所属して別のことをサイドでやるのがいいんじゃないかな。ひと昔前はどこかの会社に入ったら、思い切って転職しない限りレールに乗っちゃうけど、今はいろんな選択肢がありえるから。
「無難コース」を選ばなかった場合、「これで生きていこう」と思えるものってどこかに落ちているんでしょうか・・・。
自然とそれが見つかる人がいる一方、見つけられなかったり気付いてなかったりする人もいるのではないかと思って。
たまたま出会ったものの中からヒントが見つかることも多いと思う。「資格」も最初から僕の中で考えて導き出した答えではなく、ある日たまたま触れたものだから。それがいつどこに落ちてるかはわからない。いろんな物を見たり、いろんな人に会ったりしていく中で気付ければいいですよね。
鈴木さんと仮に佐藤さんという人が「資格」と同じように出会ったとしても、二人とも「資格コンサルタント」になるとは思えません。
鈴木さんが「資格」に惹かれた理由はなんだったのでしょうか?
僕はコレクター気質があります。資格が1個ずつ増えていくのが嬉しい。だから例えばTOEICのスコアを上げることにはあまりモチベーションがわきません。TOEICのスコアが上がっても、取得資格が1個増えるわけではないですからね。
「とにかく1つでも増やしたい」「増えればなんでもいい」って思えているから「こんな資格取っても意味ないよね?」なんて思わずに楽しめるんだと思います。
極端な話、個々の資格の意義をいちいち考えて取ってないですから。でも、数が増えれば増えるほど、結果的に新しい世界がどんどん広がっていくのが楽しい。そこが僕の性格にハマったのは間違いないですね。
一つずつ増えていくことが喜び、だと。
そんな自分の性格にハマるものに出会えず焦っているのが、紛れもなくこの私なんですが。笑
僕は東京に出て田舎にはないものを見て、カルチャーショックを受けて、今に至っています。将来がわからなくてもとりあえず勉強して、環境を変えれば「何か」が見える可能性は高くなると思いますよ。
別に高校生の時に見つけなくてもいい。大学入ってから、社会人になってからでも遅くはない。
次の世界を見るための手段と考えれば、「環境を変えること」を肯定的に捉えられますね。
「環境を変えること」はきっかけにはなります。
僕自身が実際そうでしたからね。高校生の時はとりあえずできるだけ上のレベルの大学を目指してただけでしたが、結果的にそれでよかった気がします。
進学してから、この進路はダメ、あの進路も無理、ってフラフラした結果、今こうして「資格コンサルタント」として生きている。すんなりいっていたら、今の僕はいません。
高校生の時って視野が狭いので、知っている限られたものの中だけで判断してしまうこともあるでしょうしね。僕も最初、県外に出る気すらなかったからなあ。
そうなんですか?
もし仮に東京大学が富山にあったら、県外には出ていませんでしたね。
東大合格したから東京に行くけど、卒業したらさっさと富山に帰って、適当に就職しようと思ってました。
それは富山が好きだったからでしょうか?
好きというよりは「そもそも出る発想がない」「出る必要がない」ですね。富山でそのまま生きていくものだと思い込んでいたから。
今、東京に住んでいるのは、資格試験がたくさん開催されているからですか?
今はそれが一番でかい理由。東京じゃないとこんなたくさんの資格を毎週受けられないですからね。
資格が週1で受けられるんだったら住む場所にはこだわりません。富山に帰るのもアリだし、海外に移住してもいいし。10年後、20年後には資格試験がどこでも受けられるようになって、そういう生活が可能になるかもしれない。
「資格の楽しさ伝道師」になりたい
鈴木さんの職業は「資格コンサルタント」だと思うんですが、お仕事はなんですか?って聞かれたらなんて答えますか。
「資格や勉強が本当は楽しいものなんだと伝える仕事」ですかね。
そんなきついもんじゃないんだよ、実は楽しめるものなんだよ、実はエンタメ、アートなんだよと伝える伝道師みたいな。まだまだ目指している段階ですけどね。
実は私、、、観てしまったんです。富山出身アーティスト「鼻毛の森」さんと鈴木さんがコラボしたアーティスティックな作品を。笑
あー、僕の公式テーマソング聴いちゃいましたか。笑
「まず・乱獲・資格」ですね。
「人間資格」ってのもありますよ。
かなり耳に残るメロディーでした。あれ、鈴木さんも歌ってるんですよね?
そうなんですよ。コーラスでの参加ですが初レコーディングしました。こんな風に、資格のハードルをどんどん下げるような活動をいろんな方向から仕掛けていきたいです。
資格を勉強するときも、受験するときも1人ですよね。
でも今日お話を聞いていると、「僕一人ではできなかった」とか「世間に対して色々伝えたい」とかそんな言葉が出てくるのはなぜでしょうか。
人と関わるのが好きかというと、特別そういうタイプでもなくて、「嫌いではない」という程度。人と過ごす時間は自分の時間を確保したうえで作るタイプです。
なぜ世間の人にもっと資格の楽しさを伝えたいかというと、資格があまりにも堅いイメージだからですね。
「資格は難しくて大変なもの」と勝手にイメージされている、と。
すぐに役に立つ、すぐにお金になるとかじゃない、もっと違う価値や意義があることを知ってほしい。
『点数稼ぎの勉強法』や『7日間勉強法』といった「資格の効率的な勉強法」についての本を何冊も書いているのも、資格はもっと気軽に取れるんですよ、そこまで肩肘を張らなくていいですよ、と伝えることで、新しい学びにチャレンジする人をもっと増やしたいからなんですよね。
人に関わる仕事がしたいというより、「資格」「勉強」「学び」をもっと手の届きやすいところに持っていくような活動をされていく、と。
アーティストとしての活動も楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
資格を乱獲中の鈴木さん、当面の目標は1000個取得だといいます。資格をアートへ昇華したいと語る鈴木さんは、本当に楽しそうだった。
就活のため、キャリアアップのため、手に職をつけるため・・・目先の実利のための手段となりがちな資格を、世界を広げたり自分の可能性に気付くきっかけに変えたい。
ーそんな鈴木さんの願いを聞いていると、自分の思い込みに気がついた。
「資格」にお堅いイメージを持っていたように、「フリーランスという生き方はこうあるべき」と勝手に決めつけて、それに自分を当てはめようとしていたんじゃないか。
自由に生きていくためにフリーランスになったのに、その自由さを手に入れるために「〇〇をしなければならない」「〇〇に違いない」と思い込み不自由になっていたんじゃないか。
一度肩の力を抜いてみよう、これまで出会ってきた人やモノに思いを馳せてみよう、そう思わせてくれたインタビューだった。
鈴木秀明(すずき・ひであき)
1981年8月4日富山県生まれ。
資格・勉強コンサルタント。総合情報サイト「All About」資格ガイド。
富山県立砺波高校卒。東京大学理学部卒。東京大学公共政策大学院修了。
気象予報士、中小企業診断士、行政書士、証券アナリストをはじめとした620個を超える資格をすべて独学で取得。年間50個以上のペースで資格を取り続け、資格の専門家として多方面で活動中。
雑誌・テレビ・ラジオなどのメディア出演実績は250件以上。(テレビ出演は「笑っていいとも!」「アウト×デラックス」「たけしのコマ大数学科」など)
著書に『東大→東大大学院→600個超保有の資格王が教える 点数稼ぎの勉強法』、『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』(いずれもダイヤモンド社)などがある。