をかしのカンヅメ Vol.6
公開日:2019_10_19

小学生からの”俳優”の夢を叶え、さらに夢を追い続ける「夢追い人」|古村勇人

Guest:古村勇人さん / Text:中崎史菜

ふるさと・富山のこと

富山出身の化学者・高峰譲吉をモデルにした映画『さくら、さくら』では
メインキャストを務めた

他に人生を変えた出会いはありましたか?

出会いというか、「富山」というふるさとの存在も人生のターニングポイントに関わっています

デビュー直後にメインキャストを務めた映画『さくら、さくら』は、タカジアスターゼやアドレナリンなどを発明し、アメリカに桜を贈った富山出身の化学者・高峰譲吉の生涯を描いた映画でしたし、北陸新幹線開業を機に『越中万葉夢幻譚』の当時のメンバーが中心となって富山後援会を作ってくれました。

そして、一昨年は同じく富山出身で、元NHKのプロデューサーである布施実さんとの出会いがあり、大伴家持生誕1300年記念舞台『大伴家持 剣に歌に、夢が翔ぶ!』にも出演させていただきました。

大伴家持は『越中万葉夢幻譚』の主人公。そう考えると、大伴家持が導いてくれた縁のようにも感じています。

大伴家持生誕1300年記念舞台『大伴家持 剣に歌に、夢が翔ぶ!』より
(撮影/金森正晃)
今でも交流が続く舞台『大伴家持 剣に歌に、夢が翔ぶ!』メンバー(敬称略)
(後列左から)古村勇人、本多真弓、池上季実子
和泉元彌、とよた真帆、新藤栄作、大橋吾郎
(前列左から)清水のりこ、村上佑二、布施実、宮澤南菜

富山を離れてずいぶん経ちますが、古村さんにとって富山はどんな存在なんですか?

ふるさとで暮らした時間よりも東京で過ごした時間の方が長くなりましたが、富山は大好き。その想いはどんどん膨らんでいて、時間があったら帰りたくなる。

だからこそその思いに流されることなく、東京で戦って大河ドラマにレギュラー出演したいんです。これは今も昔も変わっていない夢ですね。この夢を叶えることこそが、富山で応援してくれている皆さんへの恩返しだと思っているんです。

地元を愛しながらもあくまで東京で戦っていく、と。

はい、そうですね。

そんな想いを込めて実は毎年、富山で『古村勇人トーク&ライブ』というタイトルでディナーショーを開催しています。ディナーショーというと歌のステージのイメージが強いですが、僕のディナーショーは芝居仕立てにした朗読劇とオンステージを一体にした日本のどこにもないディナーショーなんですよ。

キャストもスタッフも一流の皆さんに集まっていただいていますしね。

師匠・里見浩太朗さんから頂いたタキシードを着て、
バラの花を配りながら『百万本のバラ』を歌う古村さん

ディナーショーにはどれくらいの方が来られたんですか?

富山後援会の発足を記念して開催した1年目の観客が80名、2年目で120名入るようになり、昨年は350人の方が来てくださいました。これには自分が一番びっくり。ふるさとって本当にありがたいものです。

ディナーショーをきっかけに歌の勉強も本格的に始めました。もともと歌は好きだったんですが、俳優だからこそ歌える歌があると思っていて、歌手デビューという新しい夢ができました。これも実現させますよ!

昨年のディナーショー『古村勇人トーク&ライブ ~丘みどりを迎えてPART2~』より
(撮影/鯨井康雄)

ディナーショーって、普通のコンサートやライブと違って少しお高いですし、ハードルも高いですよね。それでその観客数は本当にすごいです。

ありがとうございます。去年は過去最大規模での開催でした。紅白歌合戦に連続出場された丘みどりさんをゲストに迎えての公演だったので、とても盛り上がりましたよ。ショーとお食事の会場を別にしたので、その日のホテルをほとんど貸し切ったようなものでした(笑)

どんな内容のディナーショーをされているんですか?

泉鏡花の名作『滝の白糸』を芝居仕立ての朗読劇として台本を書き下ろし、大伴家持の舞台でお世話になったベテラン俳優の新藤栄作さん、大橋吾郎さんにも出演をお願いしました。すると、プロデューサーの布施実さんが演出をしてくださることになり、その流れで、大河ドラマの衣裳さんにも参加していただきました。そして、当日は女優の池上季実子さんまでもが富山に駆け付けてくださったんです。もう思いがけない展開の連続でした。キャストやスタッフだけを見ても、縁が繋がり、広がっていくことがわかると思います。

結果は大成功。これだけの皆さんに力を貸していただいているわけですからね。お客様からは涙が止まらなかったという声が殺到しました。丘さんの熱演が素晴らしくて、役者を続けていてよかったなと思いながら花道を歩いたことをはっきりと覚えています。
でも、今の僕にとっては、これはふるさとだからできていることです。いつか東京で再演したい。それも遠い未来ではなく近い未来の夢。また新しい夢ができたんです。

「ディナーショー」という形にこだわっておられる理由は何ですか?

ディナーショーは一夜限りの夢。
年に1回くらいはオシャレをして、美味しいフルコースを食べて、素敵なショーを楽しめる時間があれば、毎日の生活の励みにもなると思うんですよ。

それに、同じ内容で全国を回るショーはたくさんありますが、僕がやっているのはふるさとのために制作したもの。2016年は高橋治原作の『風の盆恋歌』、2017年は竹久夢二をテーマに書き下ろした『夢二恋歌 永遠の人』、そして昨年は『滝の白糸』とすべて富山に関係する題材を取り上げてきました。そこに価値があると思っていますし、これが僕なりのふるさとに対する想いですね。

2016年のディナーショー『古村勇人トーク&ライブ ~風の盆恋歌が聞こえる~』より
相手役はうどん県副知事としても活躍する女優の木内晶子さん

古村さんて人とどんどん繋がって、夢もどんどん膨らんでおられますよね。
人との出会いにおいて、何か心がけてることはありますか?

出会いって求めていかないと、なかなか出会えないものですよね。「結果」は動いた人間だけがもらえるご褒美みたいなもの。だからこそ動き続けていかなきゃいけないと思っているし、一期一会を一期一会で終わらせたくない。

一期一会の精神を忘れずに、「これが最後かもしれない」と覚悟して、目の前のことに全ての力を注ごうと思っています。それでいて一期一会で終わらせたくないから、その縁を繋ぐ努力ももちろんしていきますよ。

2017年のディナーショー『古村勇人トーク&ライブ 〜丘みどりを迎えて〜』より

なるほど。
毎日、いろんな出会いがあるじゃないですか。
でもどう頑張っても全員には心を配りきれないと思うんです。それについてはどうですか?

さすがに全員には難しいですよね。それだけに、「この人だ!」「これを逃しちゃいけない!」ってピンとくる出会いには前のめりになって、つかんで離さないことが大切だと思うんです。

それは直感的なものですか?

直感ですね。その直感を信じて動けるかどうか。自分の直感なんだから、外れたって誰にも文句は言えないし(笑)

これからの「古村勇人」

先ほど「ずっともがいてる」という表現をされていましたよね。

もうずーっともがき続けてます。でもそれは苦しさとイコールではありません。

僕は今39才なんだけど、 上京したときの感覚と何にも変わってないんです。

大学受験で泊まった新宿南口のホテルから夜景を見たときに、東京ってこんなたくさん人がいるんだ!っていう衝撃が忘れられなくて。

「これだけ人がいる中で、どうしたら這い上がれるのかな」ってその時も今もずっと思っていますね。

「こんなこと何年やってんのかな」って思う自分もどこかにいるんだけど、自分にとって東京は「夢を叶える場所」であり続けてる。あと1年で40歳。その時に見える景色が少しでも変わっているように、これからの一年は高みを目指してもがき続けます。

私も上京してすぐに、渋谷のスクランブル交差点でカルチャーショックを受けました。
真っすぐも歩けないような人混みの中で、本当に自分が小さくなっちゃったように感じたんですよ。
20年前の古村さんのように大学進学しようとしている高校生や、働く場所や住む場所で迷っている人たちに、上京を勧めますか?

決して、東京に出てくることが偉いわけではありません。

でも、どんな分野であっても東京には第一線で活躍する人たちがいて、そこを目指して全国から人が集まってくる場所なので、一度は見ておいた方がいい光景だよとは言いたいですね。

古村さんには小さい時から夢があって、それに対してかけた時間も長いですよね。
夢に向かってまっすぐに進んでこられたと思うんですが、誰しもその「夢」に出会える訳ではないと思うんです。それについてはどうでしょうか?

以前、小学生に講演をした時「自分の夢を大事にしてね」というメッセージを伝えようしたら、そもそも夢がないっていう子が意外と多かったんです。僕みたいな生き方をしてきた人間には、夢がないなんてビックリ!信じられませんでした。

でもそういう子達にも伝わるように「自分の好きなことはとことんやった方がいいよ」っていう言い方に変えたら、うなづいてくれました。だって好きなことって頑張れるでしょ?好きなことは誰に否定されるものでもないし。

「これが本当に好きなんだろうか」って自信が持てないこともあるのですが・・・。

ついついやっちゃうものを選べばいいんじゃないかな。逆に、やることに対して迷いがあるなら、それは迷う程度のものなんだと思う。

まだ出会ってないだけで、誰にでも好きなことは絶対にあるはずです。

どこかに自分の好きなことや自分に合ったものがあるはずだと探しても、見つけたものがベストアンサーかはわからないですよね。

今「ベストアンサー」って言ったよね。「これだ!」って思うものを待ってるのかもしれないけど、ベストアンサーは結局自分が決めなきゃいけないと思うんです。自分で決めて、その結果自分に合ってたと次第にわかってくるもの。

例えば、史菜ちゃん(インタビュアー)はイベントの企画や運営もしてるでしょ?

そのイベント空間はすごく居心地がよくて、楽しいと思うんだけど、その楽しさだけに寄っちゃうと結局は自己満足の世界になってしまう。

好きなことを好きな人たちで集まってやるのは楽しいけど、それを仕事にどう転換させていくのか。
どうやって「好き」を仕事にしていくのかを模索していく過程もきっと面白いと思います。

なるほど。楽しさを追求することと、自己満足になることは全く別物ですよね。

古村さんはこれまでくじけそうになったことはありましたか?

役者の道を断念せざるを得ない状況は山のようにありました。今だってそうですから(笑)

でも自分がやりたいと思っていたからこそ、くぐり抜けてこられたと思います。

その一方で、一緒に夢を見てくれる人とも出会えましたしね。一枚の年賀状が後々になって実を結んだように、一つひとつの出会いが時間をかけて熟成していくんです。

年月とともに美味しくなっていくワインみたいにね。でも、そのワインを熟成させられるかどうかは自分次第。大事にしたい人が現れたら、そう思いながら行動に移していかなきゃいけない。

「人は財産」っていう言葉があるけど本当その通りだと思います。そのためにも、他の人から「こいつかわいいな、おもしろいな」って思ってもらえるように、人間性やスキルを磨いておかないと。

こっちがいいと思っても、相手がそう思ってくれなかったら関係は成り立ちませんからね。

私自身、想いはあっても行動には全然移せておらず耳が痛いです・・・。
それではインタビューの最後に「古村さんの仕事は何ですか」という質問をさせてください。

職業は何かと聞かれたら「俳優」だけど、仕事は何かと聞かれたら「夢追い人」です。だって夢を追い続けてきたんだもん。

いちばんの夢は大河ドラマのレギュラー出演ですが、それ以外にもいろんな夢が次々とできています。

「この人と仕事をやりたいな」とか「こんなこともやってみたいな」って夢の数が増えて、夢のまた夢みたいなものが増えて。それを一つずつ目標にして、頭を抱えながら、そして楽しみながら、もがいています(笑)

今、いちばん近くの夢はなんですか?

おかげさまで、今年も5年連続でふるさと富山でのディナーショーが決定しました!

今年は新元号・令和の出典で話題の『万葉集』ゆかりの地・雨晴海岸を舞台に、『義経伝説』を描きます。
女優の池上季実子さん、細川たかしさんの愛弟子としてブレイク中の演歌歌手・杜このみさんにダブルメインゲストとして出演していただくことも決まりました。
今、これまでの作品や文献を調べながら台本を書いているのですが、昨年以上の日本のどこにもないようなディナーショーにすることが、今一番近くにある夢ですね。

とってもタイムリーな題材で楽しみです!これからもずっと応援しています。
本日は本当にありがとうございました。


何度も「もがいている」という言葉を使う古村さん。

素敵なジャケットで、39歳には見えない若々しさで、そして夢だった俳優という仕事を現実のものにして・・・キラキラと輝く彼にも、足をばたつかせる時があることに、正直ちょっと安心した。

好きなことを仕事にしたら、幸せなのかという問いの答えはYESかもしれないけれど、でもそこに苦労がないか、と問われればそれはNO。

俳優の仕事は就職活動のようなものなのかもしれない。一つの役が終われば、また新たな仕事を求めて稽古に励み、アピールして仕事を見つける。そしてその仕事を懸命にやり抜き、また次の就職活動を始める・・・。

古村さんはこれからも、もっとワクワクできる就職先を目指して、就職活動を続けるに違いない。

「好きなことを好きな人で集まって楽しむこと」を、どうやったら「仕事」にできるのか考えることの大切さ、そして考える過程すら楽しめるものだということを教えてもらったインタビューだった。

インタビューを終えて、古村さんと

古村勇人(ふるむらはやと)
1980年5月8日生まれ。富山県高岡市出身。東京都立大学経済学部卒業。
2001年「セブンアーツ新人募集オーディション」に合格後、時代劇のトップスター・里見浩太朗の下で学びながら、2006年、フジテレビ系『新・細うで繁盛記』にてデビュー。その後、TBS系『水戸黄門』『さすらいのプラチナワゴン』、テレビ朝日系『必殺仕事人2013』『司法教官 穂高美子』『名探偵キャサリン』、映画『次郎長三国志』『さくら、さくら』『のぼうの城』、舞台『大伴家持 剣に歌に、夢が翔ぶ!』など数多くの作品に出演。
2015年には富山後援会が設立され、ディナーショーやファンイベントでも人気を集めている。昨年の『古村勇人トーク&ライブ 〜丘みどりを迎えて PART 2〜』では、芝居仕立てにした朗読劇『滝の白糸』とオンステージを一体にした新感覚のディナーショーで好評を博した。
今年はBSプレミアム『スローな武士にしてくれ』に出演、歌手デビューの呼び声も高く、今後ますますの活躍が期待される俳優である。


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